今週のライオンズ
- 秀志 池上
- 2021年12月26日
- 読了時間: 7分
更新日:2022年2月7日
本日はいよいよ全国高校駅伝です。筆者の母校洛南高校は悲願の初優勝がかかり、OB一同この日を楽しみにしておりました。筆者も三年間全国高校駅伝を走らせて頂いたのですが、この時期になると思い出すのは、やっぱり前任の中島道雄先生の時は人間教育の側面が強かったなあということです。駅伝の季節になると、毎年OBさんたちが差し入れを持ってきてくださったり、激励に来てくださったりするものですが、今年は特に大エースの佐藤圭汰君を筆頭に、どこの区間にも穴がなく、補欠も含めて隙の無い布陣となり、OB達の応援も熱を帯びてきます。
こんな時、逆に周囲は「選手にいらぬプレッシャーをかけてはいけない」と逆に気を使ったりするものですが、前任の中島先生はこういう時いつも、「プレッシャーはどんどんかけてやってくださいね。そんなもん、それでつぶれてしまうようでは駄目なんですから」といつもいつもおっしゃっており、選手たちの私達には背中までズシリとプレッシャーがかかっていました。
「高校の舞台で失敗しても良いから高校を卒業してからも大きく育ってほしい」
そこには恩師のこのような想いがあったはずです。そんな前監督の厳しくも優しい想いを思い出す師走の都路、今日は後輩たちが思う存分暴れてくれることを願うばかりです。
さて、アマチュアの話しはこの辺にしておいて、2時間10分前後7人、ハーフマラソン60‐61分の選手を擁するプロ選手たちの今週の練習です。
月曜日
午前 3キロウォーミングアップ、ヒルワーク15x400m
午後 8キロジョギング
火曜日
午前 3キロウォーミングアップ、8x1000m (男子2分48秒、女子3分10秒)
午後 8キロジョギング
水曜日
午前 16キロプログレッション
午後 8キロジョギング
木曜日
午前 2キロウォーミングアップ、ファルトレク15x1‘/1’
午後 7キロジョギング
金曜日
午前 14キロ低強度、ストレッチ
午後 休養
土曜日
午前 テンポラン5キロ+4キロ+3キロ/1キロ中強度走、ネガティブスプリット
午後 6キロジョギング
日曜日
休養
今週の練習を見ると随分練習のレベルが上がったなあという印象です。土曜日の練習の後、選手たちはそれぞれの家に帰るからということもあると思うのですが、だいぶ練習のレベルが上がっています。ちなみにですが、ケニアの長距離事情と日本の長距離事情を簡単に説明しておくと、ケニアでは妻帯者もそれ以外の選手もトレーニングキャンプで寝食を共にし、ともにトレーニングに励みます。ケニアでは日本のように上下関係はなく、皆で食事の準備や後片付けをします。
洗濯や掃除は自分たちでやるケースと外注するケースがあります。外注と言っても500円くらいです。首都のナイロビとかだともう少し物価は高いと思いますが、ライオンズの選手が滞在するイテンはそんなもんです。掃除はもう少し大規模になると2000円くらいでしょうか。いずれにしても、そんな感じで月曜日から土曜日まではキャンプで共同生活し、土曜日の朝練習が終わると、昼寝をして、マッサージを受けて各々家に帰ります。家は数十キロから人によっては100キロ離れたところで住んでいる人もいます。
そして、日曜日は家族と過ごして、月曜日の朝に午前練習に間に合うように帰ってきます。特に門限もないですし、コーチや監督がいちいち見張っている訳ではないのですが、自然とそういう流れになっています。そんな訳で、選手たちは普段は家族と離れて暮らすのが普通なんです。
日本ではどうなっているかというと、だいたい選手寮があり、そこに大浴場も洗濯機もあります。あっそうそう書き忘れていましたが、ケニアではだいたい大きなタンクがあってそこに雨水をためておきます。そして、その雨水とたらいを使って服を手洗いするんです。日本の実業団には洗濯機のたくさんあるコインランドリーの小さい版があると思っていただけると分かりやすいです。食事は寮母さんが作ってくださることがほとんどです。
そして、だいたいのチームには門限があり、チームによっては寮に監視カメラが設置してあるので、万全なセキュリティを誇るとともに選手の門限に関してもキラリと目を光らせています。門限を破って監督から滅茶苦茶怒られた某一流女子選手の話は聞いたことがありますが、この手の話に関しては我が洛南高校陸上競技部の某先輩に勝るものはありません。
なんとこの先輩、門限破って酒を飲んで、日本のスポーツ施設では一番と言っても良いセキュリティを誇るGISS(国立スポーツセンター)の塀を乗り越えて侵入を試み、警報装置を発動させました。すぐに警備員さんが駆けつけたその先にいた先輩は、犯罪者ではないことだけはすぐに理解してもらえたそうですが、普段は仏のそのチームの監督さんを怒らせてしまい、荷物をまとめて帰らされました。
この先輩は大学時代も、賭けマージャンに負けて門限をすぎた後にコンビニでみんなの分のお菓子を買っているところに監督に遭遇、こっぴどく怒られたものの、明らかに一人分ではない量のお菓子を「全部自分の分です」と言い張る男気を見せて一人怒られていたそうです。高校時代もそういうところはあったのですが、非行に走るようなことはもちろんなく、先生に生意気な口をきく訳でもなく、どこか憎めないところがあって、いい加減なのにそれほど怒られない要領の良い先輩でした。ちなみに、箱根駅伝では1区区間2位、日本選手権では5000mで3番に入る実力者です。
日本の実業団に話を戻すと、門限があるチームがほとんどのようですが、門限を破ると具体的にどんなペナルティーがあるのかという話はあまり聞きません。怒られたという話は聞きますが、罰金があるのかどうか、それはよく分かりません。
そして、実業団選手の場合は結婚すると寮を出ても良いというルールのチームが多く、結婚すると寮を出ます。とは言え、朝6時前後から始まる朝練習に出ないといけないチームがほとんどなので、必然的に寮の近くに住むケースがほとんどです。最近は自由なチームも増えてきていますが、これが一般的な日本の実業団です。
まあ、洋の東西を問わず、長距離選手、マラソン選手は寝食を共にして、練習に励むケースがほとんどだということです。そちらの方が、トレーニングと休養に集中しやすいからでしょう。窮屈と言えば窮屈かもしれませんが、実業団は設備もそれなりに整っているので良いのではないでしょうか。
今週のライオンズの練習は少し変則的で、量は少ないですが、月曜日にヒルワーク、木曜日にファルトレクとそれなりにハードな練習が続く週となっています。土曜日はいつもはロングランなのですが、20キロを5キロ、4キロ、3キロで、間に一キロのつなぎを入れて走る変化走スタイルになっています。この練習がイメージしにくい方は、次のような練習をイメージしてみて下さい。
こちら
あなたの次のマラソンの目標タイムがサブエガ、ハーフマラソンの自己ベストが80分ちょうどなら、初めの5キロを20分25秒、次の1キロはつなぎですが、ジョギングではなく、4分45秒、次の4キロは16分ちょうど、次の1キロを4分45秒、最後の3キロは10分45秒みたいなイメージです。イテンは標高も高く、下も舗装されていない土の道なので、細かい数字はもう少し変わってきますが、だいたいそんな感じの変化走だと思って頂けると良いと思います。
水曜日のプログレッションという言葉を聞きなれない方もいらっしゃるかもしれませんが、日本語にするなら加速走です。水曜日の練習は前後に質の高い練習が入っているので、主な目的はリカバリーです。ですが、ただただゆっくり走って終わりではなく、少しだけ有酸素刺激を足そうという目的の練習です。ですので、ウォーミングアップがてら走り始めて体があったまりリズムが掴めてきたら、徐々にペースをあげていって、最後の3キロくらいは気持ち良く速いペース、最後はレースペースに近いペースでという練習です。
この練習は、疲労もほとんど残らず、それでいながら確実に有酸素刺激が積み重ねられていくので、使い勝手が良く、私は好きなトレーニングの一つです。市民ランナーの方は特に一回一回の練習で特別なことをやるよりも、継続していくことでタイムが伸びていく方が多いので、是非取り入れて頂きたい練習です。
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