なぜ基礎構築期や土台作りに取り組むことが大切なのか?
- 榮井悠祐

- 6月2日
- 読了時間: 11分
突然ですが、あなたは日々マラソンで目標を達成するために走られている方でしょうか?
そんな日々走られている中でこんな疑問をもったことはないでしょうか。
同じ練習会とかで、何で同じポイント練習やって疲れているはずなのに、あの人は翌日普通に練習できるんやろ。
練習会でなくても、SNSとかの練習報告見ていると、ポイント練習翌日でも普通に長い距離をジョグできている人を見て、何であんなに普通に走れるんやろ?って疑問に思ったことないでしょうか。
ここでいう普通っていうのは、マラソンレースペースから+1分~1分半ぐらいです。いわゆる低強度走というやつです。
サブ3レベルの方であれば、ポイント練習翌日でも5分15秒から45秒前後で10kmぐらいを走られている方を見たりしないでしょうか。
よくトレーニングは点ではなく線で考えなければならない。とか、トレーニングは継続が一番大切と聞いて、出来るもんならポイント練習の翌日も、普通に走れるようになりたいけど、どうしても疲れすぎてオフになったり、マラソンレースペースより2分以上のゆっくりのペースでのジョギングが限界だといった悩みを持たれていないでしょうか。
またサブ3を目指すなら月間300kmぐらいは走りたいと思っていても、なかなか1日10kmぐらいを継続して走れない。どうやったら月間300km走れるのか分からない。どうやって月間300kmも走れるのか分からないと悩みを持たれていないでしょうか。
今回は、このような問題、悩みについて考えていきたいと思います。
まずそもそもですが、ポイント練習の追い込み具合で翌日の疲労って変わるのでは?という疑問も当然あるかと思います。しかし、ポイント練習の翌日でも普通に低強度走ができる人は、翌日疲れて走れない人よりも追い込んでいないのかと言われると当然そんなことはないと思います。
例えば、1000m×10本を400m繋ぎで、設定ペースは10000mのレースペースとした場合、10000mのレースペースという主観的な負荷は、10000mを30分で走る人にとっても40分で走る人にとっても体にかかる負荷としては、同じ10000mのレースペースの負荷であるわけです。
また翌日普通に低強度走が出来る人も、このような練習では7本目8本目あたりの後半は、肉体的にも、精神的にもキツイのは同じであると思います。
ただ、翌日疲れて走れない人が、その人にとって5000mのレースペースで、無理くりペーサーに引っ張ってもらって完遂したとかであれば、それは追い込みすぎて翌日走れないのは普通なのかもしれません。であれば、10000mのレースペースで行えば、翌日低強度走ができるのじゃないかということになり、この問題は解決されます。
本当に上記のように該当しているのであれば、そのペース設定を改善すればいいだけなのかもしれませんが、実際は、そのような無謀なことをしているわけではなく、設定ペースも守り練習の意図を理解し取り組んでいるのに、なかなか翌日疲れて走れないから悩んでいる訳です。
ではポイント練習の翌日に、低強度走ができる人と疲れて走れなかったり、ジョギングが限界の人にはどんな差があるのでしょうか?
その違いの一つで一番大きなものは、「基礎体力(回復力)」の差であります。
先の1000m×10本というポイント練習を見て、疾走区間だけでも10kmある訳ですが、たとえ同じ10000mのレースペース負荷だとしても、10kmという距離がその人にとって負荷の大きい距離なのか、別にそうでもない距離なのか。
また、その練習の負荷から一日寝てどれだけ回復できるのか。
この距離に対しての負荷であったり、1日でどれだけ回復できるのかというのは、個人によって大きな差があるのです。
例えば、1日に10km走ること自体楽だと感じる人もいれば、苦しいと感じる人もいるわけです。また、回復力という観点から見て、繰り返しになりますが、そのポイント練習からどれだけ体が回復できるのかは個人差があるということです。
このように普段どれだけ走れるのかとか、どれだけの回復力があるのかということを一言でまとめると、基礎体力ということになります。
この基礎体力の違いから、翌日どれだけ練習できるのかが関わってくるということです。
これは長距離走・マラソンに限った話ではないですが、出来れば毎日質の高いトレーニングを全員やりたいと思っています。しかし、練習はやればやるほど強くならないこともなんとなく理解はしているわけです。
毎回毎回自分の限界まで追い込んで練習をしようとしても、回復力が追い付かないので、どんどん疲れていくだけで、オーバートレーニングになることは誰しも理解しているわけです。
ということは自分ができる練習の負荷というのは、自分の回復力とイコールになるということなんです。つまり、回復力が低ければ、それなりの練習しかできないですが、回復力が高ければ、それだけ高い負荷の練習ができるということです。
では基礎体力を高めたらいいということですが、実際どうやって基礎体力を高めていったらいいのでしょうか。
具体的には、基礎体力というのは、自分の体内にあるミトコンドリアが、どれだけエネルギーを生み出すことができるかということが大きく関係してきます。
私たち人間が何か活動しようとする時、必ずエネルギーが必要となります。もちろんランニングをする時だけではなく、日常生活で歩く時もそうですし、こうやってパソコンを打っている時もエネルギーが必要となります。このエネルギーというのが、ミトコンドリアが生み出しているのです。
人間はこのように何をするにしてもエネルギーが必要なわけですが、このエネルギーを生み出すシステムとして、大きく分けると2つあります。それは①酸素を使ってエネルギーを生み出すシステムと、②酸素を使わずにエネルギーを生み出すシステムの2つがあります。
普段の生活ではほとんどが酸素を使ってエネルギーを生み出すシステムを使っております。そのために呼吸をして酸素を吸っているわけです。しかし、たまに階段を駆け上がったりしてゼーゼーハーハーいっている時が、酸素を使わずにエネルギーを生み出すシステムを使っている時です。
このように通常は酸素を使ってエネルギーを生み出すシステムを使い、緊急的に、酸素を使ってエネルギーを生み出すシステムでは、エネルギー需要が追い付かない時に、酸素を使わずにエネルギーを生み出すシステムを使っているのです。
以上のように酸素を使ってエネルギーを生み出している時こそが、ミトコンドリアが関係しております。つまり、酸素という材料を使って、ミトコンドリアがエネルギーを生み出しているのです。
酸素を使ってミトコンドリアがどれだけエネルギーを生み出せるのかというのが、ランニングだけではなく、全ての活動においての基礎体力を決めていると言えるのです。
このように酸素を使ってミトコンドリアがどれだけエネルギーを生み出すことができるのかが、いかに基礎体力に関係しているのかということを説明してきましたが、基礎体力と回復力のことがちょっとどう関係しているのか、よく分からない方もいらっしゃるかと思います。
実は、あまりイメージできないかもしれませんが、人間が回復しようとするときにもエネルギーが必要で、そのエネルギーもミトコンドリアが酸素を使って生み出しているのです。
例えば、お仕事出社して、その仕事するのに必要なエネルギーは当然、酸素を使ってミトコンドリアがエネルギーを生み出しているのですが、仕事から帰って、次の日また出社できるように回復するのにも、酸素を使ってミトコンドリアがエネルギーを生み出しているのです。
人間というのは、何か活動をするのにもエネルギーが必要で、そこから回復するのにもエネルギーが必要なのです。そしてそこには、ミトコンドリアが関係してくるということです。
ここまで、基礎体力(回復力)とミトコンドリアの関係性のイメージができてきたかと思いますので、トレーニングに話に戻りましょう。
このようにミトコンドリアがより多くのエネルギーを生み出してくれるようになればいいということです。では、トレーニングはどのように取り組めばいいのか。
それは、できるだけミトコンドリアに刺激をたくさん与えてあげたらいいということです。
ミトコンドリアにたくさん刺激を与えるにはどうしたらいいのか。先ほどミトコンドリアは酸素を使ってエネルギーを生み出すという説明をさせていただきました。つまり、酸素を使ったランニングをたくさんすると、それだけミトコンドリアに刺激が入り、ミトコンドリアが成長するということです。
ここでは酸素を使ったランニングのことを、有酸素ランニングと表現させていただきます。また私の中で有酸素ランニングのペースの上限は、呼吸が乱れずに走れる最も速いペースとさせていただきます。
呼吸が乱れるということは、酸素を使ってエネルギーを生み出すシステムでは、エネルギー量が追い付かなくなってきているので、酸素を使わずにエネルギーを生み出すシステムを使うペースに入っているということができるからです。
ミトコンドリアに効率よく刺激を与えようと思うと、有酸素ランニングが一番効率が良いからです。
勘のいい方はお気づきだと思いますが、この呼吸が乱れずに走れる最も速いペースが中強度の持久走ということです。
つまり、ミトコンドリアに効率よく、たくさん刺激を与えようと思ったら、中強度走以下のペース帯のランニングをたくさんすれば良いということになります。それは、総走行距離も積極的に増やしていくということです。
それではもっと具体的に、中強度走以下のペース帯のランニングをたくさんするにはどうしたらいいのかを考えていきたいと思います。
実は1960年代に、既にそれを実践し、効果を歴史的に証明したコーチがいておりました。
それがアーサー・リディアードコーチです。
あなたはマラソンコンディショニングトレーニングというのを聞いたことがあるでしょうか?あるいは週に100マイルの走り込みという言葉の方が有名でしょうか?
実はアーサー・リディアードコーチは、インターバルトレーニングやタイムトライアル(テンポ走)に入る前に、この基礎体力(回復力)を徹底的に高める為に、中強度走以下のランニングをひたすら選手に実践させました。
しかもマラソンランナーだけではなく、800m、1500mのピーター・スネル選手や、5000m、10000mのマレー・ハルバーグ選手も週に100マイルの走り込みを実践しました。しかもこの100マイルとはメイン練習だけの数字なので、実際は補助練習も入れて250kmから300kmぐらいの有酸素ランニングに取り組まれておりました。
このような有酸素ランニングを多くし、ミトコンドリアの数が増え、多くのエネルギーを生み出せるようにしたわけです。
ガイドラインではありますが、巻末にあるトレーニングメニューは下記のとおりです。
月 60分有酸素ランニング
火 90分有酸素ランニング
水 60分有酸素ランニング
木 90分有酸素ランニング
金 60分有酸素ランニング
土 60分有酸素ランニング
日 120分有酸素ランニング
実際にリディア―ドコーチが指導した選手が、このトレーニング例どおりにしていたのかは私には分からないですが、目的としては、有酸素ランニングを中心としたトレーニングスケジュールで基礎体力(回復力)を高めることをしていたということです。
この有酸素ランニングを中心に組むスケジュールを、私の使う用語(ウェルビーイングが使う用語)としては、基礎構築期や土台作りという言い方をしております。
このようにマラソントレーニングに入る前に、基礎構築期や土台作りの時期を設け、基礎体力(回復力)を高めておくことで、酸素を使って生み出せるエネルギー量が増えるので、それだけ負荷の高いトレーニングができるようにもなりますし、そのトレーニングからの回復も早いので、高負荷ないわゆるポイント練習の翌日でも低強度走ができるぐらいになるということです。
これはリディア―ドコーチもウェルビーイングでも同じ意見なのですが、レースの日から逆算して、基礎構築期や土台作りの時期はできるだけ長くとってほしいと考えております。
マラソントレーニング3か月(移行期、特異期)やると考えた場合、それ以外の期間を基礎構築期や土台作りの時期として考えて取り組まれたら、それだけ基礎体力(回復力)が高められるということですので、ご自身のマラソントレーニングのスケジュールと相談し、練習計画に基礎構築期や土台作りの時期を設けてみてください。
最後に、ポイント練習の翌日が、疲れてオフやジョギングが限界だという方もいれば、ポイント練習の翌日でも低強度ができる方の差は、基礎体力(回復力)であるということをお伝えさせていただき、その基礎体力(回復力)を高めようと思ったら、基礎構築期や土台作りの時期を設けてトレーニングをしたらいいということをお伝えさせていただきました。
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