三型池上機誕生秘話
- 榮井悠祐
- 10月26日
- 読了時間: 10分
これは全てのランナーさんに起こり得るお話です。
「あ痛っ」
私は鈍痛に思わず顔をしかめながら、ベッドからはいずりだす。標高1250mあたりに位置する富士見高原の家は凍てつくように寒い。が、しかし透き通ったその空気は心も頭の中も綺麗に清浄してくれるようだ。
そんな透き通るような朝の空気の中にも私の心、いや体にはもやもやするものが巣食っていた。いつの頃からか足裏が痛み、それはもう数年にもわたり続いていた。足裏の痛みというのは厄介である。歩いていても、立っていても、普通に生活していても常時痛みがある。
負荷の高い練習の翌日は特にそうであった。そして、朝起きて初めに歩き出した時、長時間移動のあと歩き出した時は特にその痛みが強くなった。もう、この痛みはずっと続いていた。1年では治らず、2年でも治らず、3年でも治らない。一体これはなんなのであろうか?
私の足裏には小さなゴムまりのようなぶよぶよした固まりが居座っていた。それはたんこぶのように固くなく、触っても激しい鋭い痛みもなく、しかし、ずっと鈍く不快な痛みを放ち続けていた。
もう一生治らないのだろうか?
色々本を読むと足裏の痛みで車いす生活を余儀なくされる人もいるようである。そういうことを思えば、一応走れている私はまだマシなのかもしれない。しかし、私はもう痛みのない走りも痛みのない生活もすっかりと忘れてしまっていた。もう元の生活には一生戻れないのかもしれないという焦燥と走れているだけ自分はまだ幸せだと思う気持ちが頻繁に往来していた。
もちろん、ただ黙って座していた訳ではない。マッサージ、鍼灸治療、カイロプラクティック、ゴルフボールや凍ったペットボトルや足裏ほぐし器などありとあらゆるものを足裏で転がしてマッサージした。ロキソニン、イブプロフェン、アセチルサリチル酸など一通りの非ステロイド系抗炎症薬も試した。超音波治療器も試した。
しかし、何をやっても効果はなかった。いや、厳密に言えば、ちょっとは効いたかなーという気はする。ちょっとは効いたかなーという気はするのだけれども、またすぐに元に戻る、そういうことを繰り返していた。
誰が間違っているとか、何が悪いとかいうつもりは全くなかったけれど、ただずっと一つの疑問が私の胸にしこりのように引っかかっていた。それは、骨格筋細胞は2,3か月で全て入れ替わると言われているが、それならば何故3か月以上続く痛みや不調があるのだろうということである。
これは私だけではない、半年や1年、2年という長期の故障に悩む長距離選手は枚挙にいとまがない、高校でも大学でもそういう選手を見てきた。そういった悩みの深さは見ていても充分にこちらに伝わってきていた。苦悩のオーラとでも呼ぶべきものをまとうのが普通である。当たり前だ、皆走りたくて、大会で活躍したくて陸上競技部に入るのだ。皆が外で走っている間に室内で体幹補強しかできないような毎日が楽しい訳がない。
だが、何故3か月以上も続く故障があるのだろうか?
そんなある日のこと、私は一冊の書籍を手に取った。タイトルは『ミトコンドリア革命』、宇野克明博士の書いた本である。初めは別に何のために読んだという訳ではなかった。長距離走、マラソンに集中するために高校生の頃も大学生の頃も友達付き合いも恋愛もせず、ずっとトレーニングと勉強と休養に集中していた。
読書は一人で家でゆっくりとしながら楽しめる数少ない趣味である。読み始めて私はすぐに私の知識では難解であることが判明した。しかしながら、難解であるからこそそこに成長を感じられるのが私の性分である。
少しずつ少しずつページをめくっていった。
「なるほど、細胞が生まれ変わるときにはアポトーシスとネクローシスの二種類があって、アポトーシスを起こせば自然と傷ついた細胞が正常な細胞へと生まれ変わるけれど、ネクローシスになるとずっと異常が続いてしまうのか」
その瞬間に私は雷に打たれたように感じた。
「ちょっと待てよ。ネクローシスによって引き起こされるのは果たしてガンだけなのか?単純な考え方としては、正常に細胞が生まれ変わっていればウェルビーイングが保たれる、細胞が複製される過程でミスが生ずるとしわやしみや白髪などの老化現象になる、ネクローシスが生じて異常細胞として生まれ変わると異常な現象が生ずる。単純な現象としてはこういうことではないのか。あとはそれぞれの状態に対して、人間がしみとかしわとかガンとか二型糖尿病とか心筋梗塞とか名前をつけているだけで、細胞単位で起きている現象は同じではないのか?
そうすると、3か月以上続く体の不調もこれで全て説明が出来るではないか。要は程度と種類の違いだけであって、細胞単位で起きている現象は同じである」
では、一体解決策は何なのだろうか?
『ミトコンドリア革命』の中にはミトコンドリアの調子が良ければ、アポトーシスが生じ、ミトコンドリアの調子が悪いとネクローシスが生じると書いてある。では、ミトコンドリアの調子を決めるものは何であるか?
ミトコンドリアの中のシトクロムC酵素というところが酸化ストレスなく正常に働いているか否かだそうである。
では、ミトコンドリアの中のシトクロムC酵素が正常に働くにはどうすれば良いのか?
軽い運動、アスピリンの摂取、ESペレットの使用が記されていた。運動に関しては、練習があるのでそれをなるべくこなすしかない。アスピリンの摂取をまずは試してみた。しかしながら、アスピリン程度で効くような段階ではもはやなかった。
私はESペレットについても調べてみた。しかし、残念ながら検索してもヒットしない。一部でしか扱われていない医療機器なのか。
他に何かないのか。そう思って私は抗がん剤治療や放射線治療を使わずに、ガンが治る系の書籍を片っ端から読み漁った。とにかく、原理についてはどれもこれも驚くほど同じであった。つまり、ミトコンドリアの不調によってネクローシスが生じることであった。
さらに、その原因、ミトコンドリアの調子が悪くなる原因については、心身のストレス、栄養不良(といって栄養素が不足しているのではなく、毒になるものの過剰摂取、冷え、血液循環不良、局所貧血、過剰な薬物の摂取などなど多岐にわたるようでしたが、とにかく共通するのは、ミトコンドリアの調子が悪くなったり、血流が悪くなったりして、必要なエネルギーが作れなくなると異常細胞が生じるということであった。
そんなことはしかし、私にとってはどうでも良い。誰かその解決策を教えてくれ。私は心の中でそう祈った。
抗酸化作用のある食品やサプリメントの摂取、体内にある抗酸化酵素を最適化するサプリメントの摂取、活性水素や六員環構造水を多く含む水の摂取、温浴、瞑想、気功、断食、ケトン食、ゲルソン療法とにかく抗がん剤治療や放射線治療なしでガンに効くとされるものは片っ端から試してみた。
どれも全く効果がない訳ではないし、痛みが軽減されるかされないかに関わらず体調は良くなった。それまでも頭が冴えわたり、勉強が捗るなどの効果は感じられた。しかしながら、足の痛みはなかなか治らない。一体どうしたものか。
そんな折、私は良い匂いのする本を手に取った「Near -Infrared and Red Light Therapy Miracle Medicine」という書籍である。訳すなら近赤外線と赤色光線療法。奇跡の医療というところだろうか。
正直な話、読書は私にとっては趣味である。タイトルから判断して、これは役に立ちそうなどとは判断しない。だいたい基礎研究というのはそういうものである。なんの役に立つかわからないものが後々人の役に立つようになる、科学技術はそのようにして進歩してきた。
だが、嗅覚というものは研ぎ澄まされていくもので、良い匂いのする本というものはある。本書はマーク・スローンという人が書いたのだが、彼の母親はガンで死んだ。そして、ガン治療の為に入院し、抗がん剤投与や放射線治療を経て、日に日に体調が悪化し、最後は入院前よりもはるかに体調が悪化した状態で死んだ。
それを幼いころに見ていたので、彼は副作用のないがん治療について研究し出した。そして書いたのが本書である。良い匂いがする。
私の勘は当たっていた。本書の中には、近赤外線と赤色光線がミトコンドリアの中のシトクロムC酵素に吸収されるとミトコンドリアの調子が良くなると書いてある。もちろん、ということはアポトーシスが生じ、ガンが治るということである。と、書いてあるのである。
「ガンなんかどうでも良い」
私はそうつぶやくと、大学入学時に大学生協で購入したおんぼろのノートパソコンを引っ張りだした。電源を入れてから快調に動き出すまでに5分ほどかかる。私は「近赤外線療法」と打ち込んでみた。ヒットなし。次に「赤色光線療法」と打ち込んでみた。ヒットなし。
仕方がない。これならどうだ。
「Near-infrared and Red Light Therapy」
ベラルーシのVittyasという会社のレーザーがヒットした。まさか、そんな小国がヒットするとは思わなかったが、考えてみれば旧ソ連諸国である。科学技術は最先端なのかもしれない。
私はなけなしの財布をはたいて購入ボタンをクリックした。ほどなくして、私が滞在していたケニアのイテンにあるKerio Viewというホテルのオーナージャン・ポールさんから「君にべラルースから荷物が届いているよ」と声をかけられた。べラルースがベラルーシのことであると理解できるまでに少し時間がかかったが、私の胸は高鳴りだした。
ビンゴ!!
さすがに、一瞬で治るということはなかったが、少なくともあれだけしつこかった痛みが照射直後だけは痛まなくなった。しばらくするとまた痛む、また照射する、また痛む、また照射する、それを繰り返していくうちに、徐々に徐々に良くなり、一時は一生治らないのではないかと思っていたものが消えた。
それから数年後・・・
「はー、慣れないものを着ると疲れるなー。俺は日本人だ。なんでこんなもの着なきゃならんのだ」
私はそう思いながら一張羅のスーツに身を包んでいた。しかしながら、隣にいる職人の岡田さんは作業着。私も練習着で良かったのかもしれないが、第一印象は大切である。
「そんな訳でですね。なるべく、照射範囲を広く、そして、単位面積当たりの光のエネルギーを強くしてほしいんです。いやいや分かってるんですよ。あんまりやりすぎると、値段は上がりますよね。ちなみに、全身カバーできるものを作るといくらくらいしますか?いやいや、例えばですよ。例えば100万円あれば出来るものなんでしょうか?」
当初はベラルーシから取り寄せた。その次はドイツから取り寄せた。知り合いのプロランナーはアリババという中国のサイトで安価なものを購入していた。すぐに壊れた。
私は国内産のものが欲しかった。だから、作った。今はお客様からのフィードバックもいただきながら、改良を加え、三代目のモデルになっている。商品名は三型池上機。
カーテンの隙間から朝陽が差し込む。小鳥の鳴き声が美しく響く。鳴り響く目覚まし時計を止めるために私は兵士のように、いや洛南高校陸上競技部1年生のようにベッドから飛び起き、迅速に目覚まし時計を止めた。
痛みに疼くことなく朝起きてすぐに素早く動けること、もう「起床時刻になりましたので電気の方つけさせていただきます」といって電灯をつけるやいなや背嚢を背負ってグランドに向けて全力疾走しなくても良いこと、小鳥のさえずりが美しいこと、そのすべてが私には幸せに思えた。
昨日の夜8時より三型池上機30台限定で販売中です。岡田さんが一台一台手作りで作ってくださっているので、二か月に30台が限界です。いつもだいたい24時間以内に売り切れてしまいます。このメールをあなたがお読みになられる頃には24時間前後が経過しているでしょう。
もしまだ間に合えば、こちらからご購入頂けます。
ウェルビーイング株式会社代表取締役
池上秀志

























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