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スピードワークの本当の意味

 あなたはスピードワークあるいはスピードセッションとインターバルの本当の違いをご存知ですか?


 今回は本当の意味におけるスピードワークという言葉の意味と目的、やり方を説明させて頂きたいと思います。


 さて、早速ではありますが、具体例を挙げるということで、過去二週間のライオンズの選手のトレーニングプログラムを共有させて頂きます。スタンダードチャータードマラソンまで残り3週間を切り、各選手緊張感が高まってきているところです。


月曜日

朝 - 18km低強度走

午後 - 10km低強度走


火曜日

午前 - スピードワークセッション (休息1分)


男子 - 1000 x 12 - (3:05, 3:04, 3:03, 3:03, 304, 3:04,3:04, 3:03, 3:08, 3:05, 3:00,3:01)


女子 - 1000 x 10 - (3:20, 3:20, 3:18, 3:17, 3:16, 3:17,3:18, 3:20, 3:19, 3:17)

午後 - 8kmシェイクアウト


水曜日

午前 - 18km低強度走

午後 - 10 km低強度走


木曜日

午前 - ファルトレク1/1 x 20

午後 - 8kmシェイクアウト


金曜日

午前 - 18km低強度走

午後 - 10km低強度


土曜日

早朝 - テンポ走20km - 男子(67分) 女子 (75分)


日曜日

完全休養


 この週の低強度走は4:40-4:30/k


月曜日

早朝 - 18km低強度走 - 男子 - (3:50 TO 4:00 PACE) 1時間12分

 女子- (4:10 TO 4:20) 1時間19分 午後 - 10kmジョギング 火曜日 午前- スピードワークセッション 男子 - ウォーミングアップ20分 + 800 x 15 time of 2:22 女子 - ウォーミングアップ20分 + 800 x 12 time of 2:34 p.m - 8km ジョギング 水曜日 早朝 - 18km低強度走 - 男子 - (3:50 TO 4:00 PACE) 1時間12分、 女子- (4:10 TO 4:20) 1時間19分 午後 - 10 kmジョギング 木曜日 午前 - ファルトレク3/1 x 8 + 1/1 x 8 午後 - 8kmジョギング 金曜日 早朝- 18km低強度走 男子 - (3:50 TO 4:00 PACE) 1時間12分、 - (4:10 TO 4:20) 1時間19分 午後 - 10kmジョギング

土曜日 早朝 - ロングラン於モイベン(平坦なコース) -


男子25km - 1時間22分 女子 - 25km - 1時間37分


日曜日

完全休養


 さて、以上のような練習となっているのですが、この中にスピードワークセッションと言う言葉が入っています。では、スピードワークセッションとは一体厳密にはどのような意味なのでしょうか?


 もちろん、なんとなくインターバルトレーニングをやっているということはお分かりいただけると思うのですが、実は厳密には違う概念です。


 陸上競技の場合は、運動生理学と異なり言葉による厳密な定義と言うのは存在しないのですが、少なくともインターバルトレーニングは必ずしもスピードワークではないということは理解しておいた方が良いので、今回は改めて説明をさせて頂きます。


 早速答えの方を書かせて頂きますと、スピードワークとはスピードの養成を目的としたトレーニングのことです。このように書くと、えっそれってインターバルのことじゃないの?と思われる方が大半だと思いますが、必ずしもそうとは限りません。


 例えばですが、1500mを専門とするような選手でも冬季トレーニングや春先には、レースペースよりもはるかに遅いペースで、1マイルのインターバルや1200mのインターバル、1000mのインターバルを合計で6000mから8000m程度やるケースがあります。


 何故ならば、1500mにおいても有酸素能力が非常に重要であり、こういったワークアウトは有酸素能力を高めるからです。


 マラソンランナーにおいても、多い選手だと5000m4本とか3000m8本とかそういった練習をする選手がいます。というよりは、ケニアにいくまでの私はマラソンをやるならそういった練習がスタンダードなのかと思っていました。


 基本的には、マラソントレーニングに入る前に、5000mや10000mに向けたトレーニングをしておき、マラソントレーニングに入ったら、3000mや5000mなどのロングインターバルに伸ばしていき、同時に総走行距離や40キロ走の本数を増やしていくものだと思っていました。


 その考え方は間違ってはいませんが、この場合におけるインターバルトレーニングは積極的にスピードを養うというよりは元々持っているスピードをマラソン用に変換していく、スピード持久力を養う練習です。


 一方の、スピードワークはもっと積極的に速いスピードに体を慣らしていくための練習になります。例えばですが、1500mの選手なら400m前後の距離を1500mのレースペースかそれよりも速いペース、場合によってはスプリント的な練習も入ってくるような練習です。


 ほんの一例を挙げると、私は400m10本を400mつなぎか、300m15本を300mつなぎという練習が好きでした。


 そして、マラソンやハーフマラソンの選手なら、1000m10本を400mつなぎで行えば、ハーフマラソンやマラソンよりも明らかに速く走ることが出来ます。こういった練習がスピードセッションです。


 ケニアにいくまでの私は基本的にはレースペースという概念を常に持って練習していました。次のレースで使うレースペースはだいたいどのくらいなのかということを常に考えて、その前後のペースを練習に応じて使い分けていました。ですから、速ければ速い方が良いという考えではなく、厳密にコントロールしていました。


 この考え方自体は何も間違っていませんし、寧ろ今でも正しいと思っています。


 ですが、ケニアに行くと全く違う練習を目にしました。マラソンランナーが600m15本を平均1分39秒から1分36秒くらいでやっているのです。つなぎは200mなのですが、その200mの大半を歩き、速い選手も遅い選手もよーいドンでスタートして、一本ごとに結構追い込んでいるのです。


 まあ、追い込んでいるといっても、トップの選手は1500mも3分30秒台で走る選手たちなので余裕があるのかもしれませんが、とは言えみんながみんな10000m27分半や26分台で走る訳ではありませんし、標高2300mの土トラックであることを考えると彼らにとってっもかなりハードな練習です。


 もちろん、バリエーションは様々で800mの日もあれば、400mの日もあれば、1000mの日もあれば、1200mの日もあればと言う感じなのですが、いずれにしても、否定できないのは、マラソンランナーがスピードの養成に励んでいるうということでした。また、レースペースを意識するという私の概念を根底から覆してくれました。


 この経験は私には非常に衝撃でした。それはタイムが速いからではありません。もちろん、それもありますが、それ以上に衝撃だったのは、「基礎スピードと基礎持久が出来ていれば、レースは何とかなるんだ」ということが肌感覚で分かったからです。


 基本的に私はレースから逆算して考えるタイプです。その方が計算しやすいですし、心理的にも肉体的にも準備が出来たと感じられるからです。これは距離を問いません。ハーフマラソンに向けた練習をするなら、ハーフマラソンの強度の練習を入れていって、レースはそのままの感覚で走った方がやりやすいです。


 もちろん、練習ではそこまでレベルの高いことは出来ないので、インターバルで合計距離もせいぜい12キロ程度ですが、感覚さえつかんでおけばあとはレースの日は同じ感覚で休憩を挟まずに行けるところまで行くだけです。


 5000mも5000mの強度でのインターバルを入れて、あとはレースの日はそのまま走るだけです。レースで思い描いたレースが出来ないことも多々あります。でも、スタートラインに立った時点では、今日自分が何をすべきかが100%理解できています。あとはそれで最後までいけるかどうかはやってみないと分かりません。


 ただ、私がケニアで見た練習にはそんな概念が一切ありませんでした。本当の意味でのスピードセッションです。


 誤解の無いように書いておきますが、練習は量より質だと書いている訳ではありません。実際に、彼らがやっていたスピードセッションの合計距離は10000m前後なので、ペースを考えると量的にもかなり多いです。


 また、この練習でマラソンが走り切れるのは、それ以外に持久力を養う練習がしっかりと入っているからです。距離走ももちろんそのうちの一つです。


 では、スピードセッションを入れることのメリットは何でしょうか?


 ここで重要なのは、努力は有限だということです。生物的としてのエネルギーに限りがあると言っても良いでしょう。


 ハーフマラソンのレースをイメージできるような実戦的な練習とスピードセッションを両立できれば良いですが、両方に重点を置くことは出来ません。ですが、スピードセッションに重点を置くことの最大の利点は自分の可能性を広げてくれることです。


 大は小を兼ねると言いますが、長距離走においては速は遅を兼ねます。例えば、ハーフマラソンのレースをイメージできるような練習ばかりやっていたら、今の私の走力はせいぜい1キロ3分ペースです。そのペースでハーフマラソンを走り切れば、63分前半なので、全然悪いことではないのですが、62分台、63分台を出す可能性は少なくなります。


 一方で、速いペースの練習が出来ていれば、あとは持久的な練習と組み合わせれば2分55秒で最後まで走り切る可能性がゼロではありません。いや、寧ろ練習で5000m13分45秒で走るくらいの感覚が掴めていれば、その可能性は大いにあります。


 ただ、やっぱり逆は難しいです。全ての練習の中での最も速いペースの練習が1キロ3分であれば、2分55秒に対して余裕を持つのは難しいです。如何に持久力に優れていたとしてもです。


 実際には、それぞれの練習にそれぞれのメリットがあるので、期分けを行い、年間通して、あるいはもっと長期で様々な練習を組み合わせて自分の本当の能力を発揮する、すなわちピーキングを行うのですが、今回はスピードセッションという練習の真の目的を理解して頂ければと思います。


 最後に補足説明しておきますと、何がスピードセッションに該当するかはその人の専門種目(今準備している種目)とその人の走力によるということです。例えば、今私はハーフマラソンのレースに向けて準備していますが、65分(3分5秒ペース)で走り切れば御の字ですから、1000m2分55秒を切る全ての練習は明らかにスピードセッションです。2分57秒超えていたら、スピードセッションと言えるかなと思います。


 これが84分切りを目指す人なら、1キロ3分50秒を切る全ての練習はスピードセッションと呼べるでしょう。


 同じ今の私が5000mでのタイム向上を目指すなら、1000m2分50秒以下のペースじゃないとスピードセッションとは呼べないと思います。ただし、必然的に一回の疾走距離や合計の疾走距離は少なくても大丈夫になります。


 過去二週間のライオンズの選手のトレーニングを見ると1000m12本を1分休息となっていますが、次のレースは標高1700mで開催されること、現在の各選手の走力を考えるとこれでも充分にスピードセッションです。


 女子のタイムは非常に良いので、かなり期待できるのではないでしょうか?


 ライオンズの選手の距離走動画はこちらをクリックして下さい。

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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