やった時点でゲームオーバー!わかっているようで実は曖昧な「オーバーペース」について解説します
- 深澤 哲也

- 5 日前
- 読了時間: 12分
突然ですがあなたは「オーバーペース」と聞くと、具体的にどれくらい速いペースを思い浮かべますか?
うーん、1kmあたり5秒くらい?それとも10秒?レースの距離によっても変わってくるんじゃないかなぁ。
というか逆に、理想的なペースの範囲ってどれくらいなんだろう?
このように、よく考えてみると意外とオーバーペースというのは曖昧に理解していることがありませんか?
また、実際に自分がこれなら大丈夫だと言える具体的な安全圏のペースって、どれくらいなのかということも、案外ざっくりとした感覚だったりしませんか?
でも、実はオーバーペースや適切なペースというのは、1kmあたりどれくらいということを具体的に指し示すことはできます。これを知っておくかどうかで、レースの成否が分かれると言っても過言ではないでしょう。
はっきり言います。長距離走やマラソンでは、過度なオーバーペースをやってしまったら、もうその時点で記録は望めません。これは気合いとかの話ではなく、人体の構造上無理なのです。
では具体的にどこからがオーバーペースで、どこまでが安全なのか?今日は運動生理学的観点から見た理由も含め、その基準をあなたにお伝えします。
オーバーペースと言えるライン
まずはオーバーペースというのは具体的にどこからがそれに該当するのかをはっきりさせておきましょう。
オーバーペースと言えるラインはズバリ、自分の目標レースペースから1kmあたり5〜10秒以上速いペースです。
これをもっと厳密にいうと、1kmあたり5秒を超えてくると危険ゾーンに入ってきて、10秒以上速くなるともはや致死量です。
例えばこれを5000mレースに当てはめてみましょう。5000mで20分を目指している人がいたときに、目標レースペースは1kmあたり4分ですよね。
ここから5秒速いと、3分55秒。最初の1kmの通過は、なんぼ速くてもこれが限界ラインだと思ってください。え?3分50秒で入ってしまった?大変残念なのですが、もうそのレースで記録を狙うことは難しいでしょう・・・
そんなのやってみないとわからないじゃないか、と言われるかもしれません。確かに世の中に絶対はありませんから、もしかしたら耐えられる可能性はあります。ですが、それは本人が自分の実力を正しく把握していなかっただけで、元々3分50~55秒くらいが適切なペースだっただけという可能性が高いです。先述の通り、これは人体の構造上の話なのです。
なぜオーバーペースをやってしまうとその時点でレースが終わってしまうのか?
なぜ1kmあたり5秒や10秒速く入ると危険なのか?それは、ペースが速すぎると体の中での代謝機能が阻害されるからです。
私たち人間は、常に体内で「代謝」を起こして生活や運動に必要なエネルギーを賄っています。この代謝には大きく分けて二つのシステムがあり、一つは酸素を使ってエネルギーを生み出す「有気的代謝」もう一つは酸素を使わずにエネルギーを生み出す「無気的代謝」です。
私たちは普段、圧倒的に有気的代謝の方をよく使います。なぜなら有気的代謝は疲れずにエネルギーを生み出し続けることができるからです。
ん?ということは無気的代謝は疲れるということ?はい、その通りです。無気的代謝を使うと体は疲れるのです。なぜなら、無気的代謝は使用することで乳酸とプロトン(水素イオン)を生み出してしまうからです。
それなら最初から無気的代謝なんか使わず、ずっと有気的代謝だけで走り続けたら良いじゃないか、と思われるかもしれません。本当にその通りなのです。ですが、レースという極限の場面では、中々そうはいきません。基本的には有気的代謝だけでペースを維持するのに必要なエネルギーを生み出したいのですが、ペースが上がるとどうしても有気的代謝だけでは必要なエネルギー量を賄いきれなくなる時が来るのです。
そうなったときに、無気的代謝の出番が来るのです。つまり無気的代謝というのは、ペースが上がってきて有気的代謝だけで必要なエネルギー量を賄いきれなくなったときに使われる「非常用エネルギー」のようなものなのです。
無気的代謝が非常用エネルギーとなるには理由があります。それは無気的代謝は、瞬間的に大きなエネルギーを生み出すことができるからです。
これだけ聞くと無気的代謝が優秀な代謝システムに感じますが、先ほどの話を思い出してください。無気的代謝は、疲れるのです。それは、瞬間的に大きなエネルギーを生み出せるけれど、その代償として乳酸とプロトン(水素イオン)というものが発生してしまうからです。
乳酸とプロトン(水素イオン)が発生するとなぜダメなのかというと、それは体の組織を酸性化させるからです。人間の体は常に「最適pH」と「最適温度」というものが設定されていて、最適pHは弱アルカリ性、最適温度は37度前後と言われています。
つまり、乳酸とプロトン(水素イオン)が発生し、血液中にそれが溜まると、そこから体組織の酸性化が始まります。体が酸性化すると、最適pHの弱アルカリ性から外れますよね。そうなると、脳が危険信号を発するのです。つまり脳が体に対して「おい、これ以上運動させると死んでしまうから、やめさせよ」と。
どうやってやめさせようとするかというと、代謝を無理やり止めるのです。代謝が止まるとエネルギーを生み出せませんから、当然運動をやめざるを得ません。ペースなんてとても保てませんよね。
これがオーバーペースになってしまうと大きく失速する理由です。乳酸とプロトンが体を酸性化させることで、最適pHから離れ、脳が代謝をやめさせ、エネルギー需要に対して生成が追いつけなくなるからなんです。
ちなみに夏場に全く走れなくなるのも同様の現象です。暑さで体温がどんどん上昇していって、最適おんどの37度をはるかに超えることで、脳が危険信号を出して体に代謝を止めさせます。その先の流れは、乳酸とプロトンによる失速と全く同じ原理です。
ちなみにこういう話をするともしかしたら「乳酸は一部エネルギーとして再利用されるから、別に大丈夫なのではないか」と思われるかもしれません。
確かに乳酸自体は一部はピルビン酸というものに再変換され、エネルギーとして再利用されます。しかしですね、もうそんなもので凌げるレベルを超えてしまうのがオーバーペースによる乳酸やプロトンの出方なんです。再利用される分をはるかに上回る量が蓄積していくので、もうどうやっても失速の一途をたどります。
ちなみに、一度レース中に乳酸やプロトンが蓄積したら、レース中に回復するのは無理です。世界で最も成功しているコーチの一人であるコーチ・カノーヴァ曰く「普通は低強度走を挟んで2~3日かけてやっと回復するもの」
つまり、何をどう頑張ってもレース中に乳酸とプロトンを除去して持ち直すのは無理なんです。だから、オーバーペースになってしまうともう終わりなんですね。
ここまでのお話で、オーバーペースとはどれくらいから該当するのか?またやってしまったらもうそのレース中には持ち直せないということはお分かりいただけたと思います。
これは気合いや根性の話ではなく、そもそも人体の構造上無理だというのは、運動生理学上はこういう説明になるわけですね。
いかがでしょうか?
今回は運動生理学的な観点からも、オーバーペースというものがいかに危険であるか、またオーバーペースというのは具体的にどこからなのか?ということについて解説してみました。
もしあなたが大事なレースで、目標ペースから1kmあたり10秒も速く入っていたら、もはやそのレースでは記録は狙えません。フルマラソンであったとしても、1kmあたり10秒速いペースで最初の5km、10kmと刻んで行ったらほぼ間違いなく後半に響くでしょう。ですので、どれだけ速くても1kmあたり5秒までにとどめていただき、適切なペースでレースを進めるようにしてみてください。
このように、そもそもの人体の特徴や構造を理解することで、無茶なレースプランを立てることがなくなり、不要な失敗を避けることにも繋がります。その人体理解の手段の一つとして、やはり運動生理学はとても有効です。なぜなら運動生理学というのは、運動中の人体において何が起きているのかを解明する学問だからです。
運動生理学の知識を有していると、あなたがトレーニングを考える際、その設定ペースは自分にとって適切なのかどうかをより正しく判断できたり、心拍数からその日行ったトレーニングが適切な負荷に収まっていたのかどうかの判断がうまくできたり、適切なレースペースを考える上でとても助けになります。
ですが一方で、注意しないといけないこともあります。それは「運動生理学的に正しい」と言われたら、それがトレーニングの全てであるという風に信じ込んでしまうことです。
運動生理学はあくまで「学問」です。自分のやっているトレーニングが正しいのかどうかを検証するための裏付けとして運動生理学を持ちいるのは非常に有効ですが、運動生理学から正しいトレーニング理論が生まれることはありません。
多くの方が運動生理学的に正しい、などと言われてしまうと、たちまちそれを信じ込んでしまっているような印象があるのですが、実はそれはあまり根拠のあることでもないですし、また勿体ないことでもあります。
我々の体の感覚って、かなり正確に作られていますし、運動生理学はむしろ、私たちの感覚の裏付けとして使う良きパートナーくらいの付き合い方をした方がうまくいくことが多いでしょう。実際、これまでの歴史を見ても国内外問わずトップランナーやトップコーチたちは、いつも運動生理学とはそういう付き合い方をしてきています。運動生理学から導き出される正しいトレーニングというものは、ないのです。
そして、もしあなたが運動生理学が好きで、これからもご自身のトレーニングの方向性を裏付ける良きパートナーとしてその知識を深めていきたいと思われるなら、絶対に受講してみて欲しい講義があります。それが「長距離走・マラソンの為の運動生理学概論」です。
もしあなたが運動生理学について興味を持ち始めていて、書店にある本やYouTube動画よりももう少し深く学んでみたいと思われているなら、こちらの講義動画はあなたの為のものです。
なぜなら、こちらの講義は運動生理学の入門講義として作成されたものだからです。この講義で解説するのは、現代においてわかっている「長距離走・マラソンを走っている最中の人間の体では何が起きているのか?」ということと、加えて長距離走やマラソンにおける実用的な側面の入り口の部分です。
では長距離走・マラソンにおける運動生理学の実用的な側面とは、一体どういうものがあるのか?
例えばですが、走っている時の感覚と、実際に起きていることが食い違う、ということって結構ありませんか?
よく生じる問題としては「力を入れたら速く走れそうな気がする」とかです。なんとなく地面に強い力をかけると速く走れる気がするのですが、あくまで「気がするだけ」。実際は、力を入れれば入れるほど余計な力の浪費が発生して遅くなります。
また他の例としては、追い込めば追い込むほど速くなる気がするけど実際はそうではない、ということもあります。一見当たり前と思われるかもしれませんが、いざ自分のことになると陥りがちな問題ですよね。
運動生理学を学ぶと、こういったことが理屈でわかっていくのです。
そもそも運動生理学とは、運動中の体内で何が起きているのかを解き明かしていく学問です。ということは、運動生理学の知識をつけると「無理なものは無理」ということがわかるようになります。
その結果として、目標ペースより1kmあたり10秒も速く入るようなオーバーペースをやったらもうそのレースは台無し確定ということがわかったり、正しい乳酸閾値の知識がついて、一番効果が最大化され、かつ疲労残りも少なく抑えられる練習強度を適切に判断できたり、そういった実践的メリットもあるのです。
つまり運動生理学というのは「適切なトレーニングやレースをするための判断材料」となり、良きパートナーとなってくれる知識です。今回はそんな運動生理学の世界の最も基本的で入り口の部分をまとめて解説した講義となります。
具体的な内容は以下のとおりです。
目次
・運動生理学の目的
・人が走るとは?
・四つの代謝系
・最大酸素摂取量
・乳酸生閾値
・走経済性
*約1時間40分の講義動画となります。
こちらの講義を受講していただくことで得られるメリットは、以下のとおりです。
・自分の行うトレーニングによる体の変化を予測できるようになる
・自分の行うトレーニングの効果を理解できるので、やる気が出る
・これは必要ないなという練習がわかるようになる
・ネットの情報や書籍、練習会で指導される内容、知り合いのランナーさんが話す内容などが正しいのか間違っているのかを正確に判断することが出来るようになる
・走ることがもっと楽しく好きになる
これだけの内容とメリットが入ったこちらの講義は、3,300円(税込)で販売いたします。
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ウェルビーイング株式会社副社長
らんラボ!代表
深澤哲也
























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